星を掴む
佐々木妖精

好きな子に好きと投げつけ
逃げた



それ以来ずっと
頭の上でボールが投げ交わされているのを見る
ボールに描かれているのは日本語でも英語でもなく
受け取っても読めないので
最中は隠れている
誰かの遊びを邪魔しないよう



「俺、まだ皮肉とか嫌味言われたことないんだ」

そう言ったら
笑われた

「良かったね。パワハラってやつから無縁で」

もしかしたら日本語以外の言葉で言われてて
受け取れなかったのかもしれないな
それは自分宛てじゃないって
思い込んでいたから



学校や職場で
無限であるかのように湧き出て
言葉を書きなぐられ
頭上を行き交っていたボールたち
彼らが留まる場所はどこだろう
そこに行けば
今まで受け取れなかった皮肉とか嫌味や
あの時の返事を聞けたかな

もしかしたら
取り主に気づかれなかったボールは
重力から逃れ
星になったのかもしれない
あんまりさみしくて寒いから
天の川なんかを形成して
せめて美しくありたいなんて
そんなことを思って

天の川が世界で一番
さみしくて
きれいなことば
なのかな



受け取らなければならなかったボール
受け取ってもらえなかった言葉たち

「悪いことしたな」

そう
報われなかった言葉に思いを馳せ
俺は今こうして
日本語のボールを
ぎこちなく投げている

イチローになりたいね
レーザービーム
エリア51

まだ読めないボールが
流星群として駆けていて
いつかその一つでも捕まえて
そこに自分宛ての
読める皮肉があったら
なぜだか少し嬉しい


自由詩 星を掴む Copyright 佐々木妖精 2007-11-22 23:13:33
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