聞く耳を持たない子供への体罰とその反響
狩心
お遊びなんてやめなさいと
お母さんは楽器を奪って
僕の耳を削ぎ落としました
声にならない無音の振動が 空間を切り裂き
壁中に描かれた呪いのような文字が踊り出します
それはメラメラと燃える何かの儀式のようで
そこに集まってくる影たちが
部族の長を決めようと 飛んだり跳ねたりしています
この手がいけないのねとお母さん
僕の指を一本ずつ圧し折って行きます
仕方なく僕の口から流れ出てくる印刷物に
母音の無い子音だけのローマ字が途切れなく書かれています
TYJGSKV … それらを無理矢理読んでみようとするお母さんが
T、Y、J、G、S、K、V、 … と一つずつバラバラにして
一つずつ、体を使って再現していくのです
こんな事をしてくれるお母さんなんて世界に一人なので
笑けてくるので、いつの間にか許してしまうのです
お母さんは体中に洗濯バサミを着けていて
それを一つずつ取っていきなさいと指示します
一つずつ取る度に、お母さんの喘ぎ声に混ざって
T、Y、J、G、S、K、V、 … と、音が重なっていくのです
僕もいつの間にか体を動かして
必死にT、Y、J、G、S、K、V、… をします
どんどん速度を増してTYJGSKV … になると
文字と体は音速を超えて光
窓の外に、飛び出していくのです
お母さん、僕に耳は必要ありませんでした
お母さんのおへそに付いているチャックをつまんで
咽喉仏まで一気に引き上げます
ジッパーがシャーッと開き
真っ赤な世界がパシャーッと広がっていくのです
そのラバースーツの中に僕は潜り込んで行きます
二つの心臓が重なって
その心拍数のズレを
肌で感じるのです
圧し折られた指で目をほじくって
床にボトンと落ちるお母さんの目ン玉
顔にポッカリと空いた二つの穴から
僕の目がギョロッと出てきて
そこから部屋を見渡すと
目の前の椅子に
縄で縛られて、猿ぐつわをはめられた幼い子供が
笑いながら、泣いているのです
そいつの耳を削ぎ落として
段々、僕の声はお母さんそっくりになっていきます
そいつの指を一本ずつ圧し折って
段々、僕は大人の意味を少しずつ知っていきます
子供の叫び声に身震いを感じながら射精し
ドアを開けて外へ行きます
お母さんの目ン玉が
僕の後ろ姿を見送っていて
お祝いですよと
パシャンと弾け飛びました
やっぱり親子って、いいものですね
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狩心 no まとめ 【 四 】