「通る人」
菊尾
どこからか浮き出た熱は
日にちが幾つ捲られても抜けてはいかない。
やがて余分な角が削られて
体内の一箇所に集約されてしまいそう。
どうせなら胸がいい。
熱源となっているこの場所から感情が生まれていく。
「足音が聞こえないから。」
理由を呟いて君が動く姿を見ている。
理屈が嫌いだと君は言う。
誰よりも自分が頷きたいだけだから。
誰かが敷いた道を歩いていく気にはなれない。
はねる君を僕はまだ、ほぐす事が出来ないでいる。
日付けが変わる事。
木々の色が落ちて街に明りが灯ったり
どこかで鳴る空砲や
ハトが舞い上がる公園の午後も
そして今の僕ら自身だって
少しずつどこかへ移動している。
彷徨いながら手探りで進んでいても
辿りつくのは皆きっと同じ場所。
だからきっと
また顔を合わせるよ。
秒針のように正確に
一秒一秒を刻んでいけるなら
抱える頭なんて無いんだろうね。
要らないと思っていた事。
今ならちょっとだけ解る気がするよ。
夜の中で聞く声が
発芽を促してくれるんだ。
見失わないように
捉われないように
毎日でも生まれ変われるよ。
遊びにきたら
一声かけてね。
今度そこのベンチで
少し話そうよ。