元気か
佐々木妖精

尾崎豊が
盗んだバイクを乗り回していた頃

私は妹を橇に乗せて引き
スキー板を八の字に伏せ
恐る恐る降下していました
彼女が飲み込まれてしまわないよう
ただそれだけに夢中でした

尾崎豊が駆け抜け
伝説となった頃
私は東京に降り立ちました

日比谷はすでに役目を終え
冬が歌っていました

東京に空はありましたが
雪はありませんでした

私がそれまで恐れ続けていたものは希薄であり
あっても一つまみなので
ひょいとかわせます
逃れられない恐ろしさは
なかったように思えます

いつまでも消えない看板はあるのに蛾がおらず
闇夜に月を探す必要はありません
私は安堵を身にまとい
自分の問題(ただパンを切り裂きワインを噴出させる)
に没頭していました

自然は征服されきっており
公園という名義で申し訳なさそうに土地を借り
動脈からきれいに血抜きされています

私は公園を愛します
むき出しの野山はきらいです
野生に蝕まれ
熊の滋養となった隣人



自然は人食いの化け物です



痛飲が祟って貧血を起こし
ここへ引き返しては
また冬を恐れている
雪を避けて吸う空は
水銀のように肺へ沈殿していく
私は常時微熱を抱える

妹がひとり
公園に避難できたは嬉しいが
眩い月に
俺は今にも飲まれそうだ



きみの判断は
きっと正しい


自由詩 元気か Copyright 佐々木妖精 2007-11-21 16:52:50
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