遠吠え
佐々木妖精
アキアカネが交差する橋の上で
アワダチソウを足蹴に
三つ指で餌の羽をむしり
魚を釣る様を眺め
その時私は
強さを知っていた
釣り上げたウグイが夕日を掻く様を
ヒグラシの伴奏に乗せ
ケタケタ笑って眺めていた
私は力を体現していた
力とは
虫の訴えに耳をかさないことであり
植物の悲鳴を想像せず踏みつけることであり
焼け焦げた魚を
猫に与えることでもある
私は誰にも食べられたことはなかったが
あらゆる有機物を
物にして食っていた
そのまま腹を満たしていれば
いつか人を食っただろう
人は
なんでも食べます
あらゆる生き物を分からなくして食べます
良心の揺れ動くことが問題で
活け造りは震度6
親子丼は体感震度0です
私は人ですが
腕白な人に食べられかけたので
今ではこっそりろ過した空気を吸い
いつもストローを加えてモクモクし
一酸化炭素で頭を麻痺させ
食事を続けています
時流によると
私は犬だそうです
不可解な聖書に押し潰され
人であることから負けてしまった
犬
それは骨っぽく
ゴワゴワした箇所の多い
観念の鎖に魂を犯された
布団くさい獣です
一角獣よろしく
頭に十字架のはえることはないでしょう