呼吸
木立 悟




水のなかに
水と同じ言葉が落ち
跡は皆
光にくちずさまれている


降る水のにおいが
道を流れる
砂に埋もれる火を映し
鏡は旧い水を横切る


知らずに光を呼吸しながら
冬は別の冬を見ている
凍えて眠るもののかけら
贖いも救いもないものの息


緑を隠していた手が昇り
灰へ灰へ向いてゆく
ふたつの指についた緑
すぎる音を染めてゆく


雨が炙る水の上に
銀は波紋なく揺れている
鏡は遠い鏡を見る
流れつづける自身を見つめる


つながらぬものにあわれみを
壊れ 棄てられ 命なきものにも
あわれみのないものにあわれみを
贖いも救いもないものにも


火は星に 波は声に変わりゆく
燃えながら空へ向かう舟
鏡の底の黄金の
まばたきと息に揺れ動く












自由詩 呼吸 Copyright 木立 悟 2007-11-15 10:48:17
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