「風の中」
菊尾

柵の向こう側で綺麗に横たわっていてよ
低速の音
よぎり始めて、永く続いて、
何事もなかったように
始まってもいなかったみたいな

気が狂ったような風の中では
見えるもの全部が動くことを止めてしまう
僕の目も見ることさえ忘れてしまう
影の鳥
目で追える速さで空を横切った

花びらが舞って
蝶々は留まる花を見つけて
何色模様で今を描いていこうか
遠のいてしまえば
ただ、それまでの話

飄々としているのは
人が、怖いから?
自分の気持ちも知らないのだから
誰かの気持ちなんて分かるわけないよ

浮かされたのなら
鼓笛隊のリズムで飛び越えてしまえばいい
ほら、君もあんなに、もう遠い

僕らは、ただの点
点と点の間に線を引こう
線の内側で
声を交わそうよ
すこしの間を空けながら


自由詩 「風の中」 Copyright 菊尾 2007-11-12 07:16:11
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