「曇る前に」
菊尾

あなたは何も
残していかない
わたしは何も
あなたにあげたりしない

きっと、迷惑なくらい
これから考えることが増えて
何も手につかなくなるくらい
そうして考えることに疲れて
ベッドで横になって沈んでみても
浮かぶのは、あなたなんでしょう

ふたりが交わした
言葉の中に
どれだけの優しさが隠れてたんだろう
嘘だとしても
笑顔のわたしが、そこにはあったはず

最後に見た
あの景色
丁寧に包んでいくから
あなたは
静かに見届けていて

その背中の温かさが
指の先から離れないまま
わたしは
冬を過ごしていく

この窓が曇る前に
あなたの星座をなぞれれば
さようならって言えるから
それまでは
どうか
どうか
このままで


自由詩 「曇る前に」 Copyright 菊尾 2007-11-12 07:13:11
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