木屋 亞万

電話を鳴らしても出てこない
呼べど叫べど来ない風景
あの景色を見たい
写真より広く範囲を捉え
動画より物を捨象する
この目で構築された世界を
浴びながら景観を走りたい

電線が感覚だけでも
宅配してくれたなら
行く所の二つ三つ四つ
天気と時間帯を指定して
壊れやすいから天地無用
割れ物腫れ物要注意

日本庭園は寺の奥
庭に咲く葉はぱちぱちと
竃で熾る火のように
風に揺れてめらめらと
板の間の縁側を避け
三畳くらい部屋の中
空は見えぬが静かに曇れ

向こうが見えない坂道の
人が多く通り過ぎた後
一人で珈琲啜ってる
少し遅めの朝の散歩で
鼻に吸い込んだ空気が
どこまで拡張するかが見物
太陽もまだ眠そうにしている

土曜の夜の布団の中
隣で一緒に丸くなって
あいつが寝ている情景は必須
もう部屋に入る事すら難しい
遠くなってしまった
見ているだけでも
温かすぎる背中

遊びを禁じられた海
仕方ないから競泳すれば
すぐに捕まり強制退去
波の粗暴さと皮膚の痺れ
荒くれる浜は日本海
ゴミだけが湧いて
波間に揺れてる

何度鳴らしても
どの風景も来やしない
あたしがこんなに淋しい
っていうのに


自由詩Copyright 木屋 亞万 2007-11-11 01:19:53
notebook Home