青
山中 烏流
溢れる私を
指先で小さな歌にして
空に、伝えようとしたら
途端に青く
それは多分
あの人形の瞳くらいに
青く、なってしまったから
私は未だ
その時溢れていた歌を
伝えられないままだ
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草むしりの音が
まだ広場に響きながら
主張をしていたとき
私は今よりも
ずっと幼さを知り
また、愛していたように
思う
鎮座した日射しが
まだ、柔らかさを
讃えていた頃
私は
はっとするほどの青を
瞼が降りる
その刹那の先に
見つけていた、から
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這い出た赤の
艶やかなきらめきを
いつからか私は
常、と覚え
滲み出る青の
涼やかなかがやきを
いつからか私は
恥、とした
溜め息のひとつが
私の耳を、横切ったのは
それが
何色に染まるかを
知りたかったのかも
しれない
もしもそれが
青く見えたのなら
私はきっと
空へと、
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水溜まりが
いつだって透明で
震えている場面
そこに
青が溶けない訳を
私は未だ
知らないでいる
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空はやはり
変わらずに、青く
私の瞳に
その姿を焼き付けながら
在る
そこに私を
伝えようとして、やめた
その青さの中に
私の見知らぬ青が
ひとつも
見当たらなくて
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鏡に映る私に
青が宿らない訳は
きっと分かっている
空が青い訳を
望まないからだと
本当は、分かっている。