「シークレット・ガーデン」
菊尾

吐き出しても余っている感情に
君は捕まらないでいて
何も知らなくていい
目隠しは離れたらほどけるよ


揺らめくロウソクの灯り
口元に寄せられるスプーン
空腹の夜が音を飲み込んでいく
僕らの笑い声もすぐに窓から外へ
気にせずに食事は進む

熟れた思考が落ちていく
囲われたイバラの庭先で
蟻が僕の内側を持ち帰る
葬列
僕を弔いながら食べればいい

片側の眼に見下ろされている世界
昼は精巧な太陽
夜は凛とした月
二つで見れば見落としてしまうから
一つで見れば両側の側面を眺められるから
二日前の夕暮れがそんな事を呟いて眼を閉じた


君はくちずさむ
懐かしくなりたい為にくちずさむ
残酷に美化された思い出が僕らを引きずり回す
一体どこへ連れ去ろうとしているのだろう
現実が幻にすり替わっていくようだよ

繋がったまま途切れずに垂れ下がるヒトスジの唾液
うずまき管までこの舌先が届けばいいのに
手首で塞がれる視界
君は僕を食べていく
軋むベッドの音が部屋の隅へ溜まっていく
憂いをなぎ払うように散らし合う
骨を噛んだ後の表情を確認する両眼
カーテンの隙間からは光が射している

真昼に庭の中心で燃えていたのは抜け殻
君の脱皮を僕は助長する


自由詩 「シークレット・ガーデン」 Copyright 菊尾 2007-11-08 23:59:03
notebook Home