世界の終わりのベッド
朽木 裕
愛する人と手を繋いで眠ると
このまま死ねたらどんなに幸せだろうと思う。
そんなことを口にすれば
「一緒に生きてこうよ、これからも。何でそんなこと、云うの?」
なんて云うのだろう、きっと。
半泣きになる貴方を想う。
貴方の泣き顔が好きなのはここだけの秘密。
身体が熱を持つ。
皮膚の下でざわめく細胞。
境界を失った身体は闇に溶けていく。
しがみつくのは怖いからじゃなくて。
声をあげるのは寂しいからじゃなくて。
泣きそうになるのは哀しいからじゃ、なくて。
愛しいからだよ。
大切な、人。
どうか死なないで。
私を看取る、約束だから。
死ぬのは私より後だからね。
なんて、エゴイスティックな願い。
私を愛してくれる貴方は叶えてくれる?
いつだって傍にいてよ。
私が死ぬときは貴方の傍じゃなきゃ嫌。
だから、ね?お願い。
シーツの海に沈みながら戯れに首を絞めてみる。
こんなとき世界の終わりが来たらいいのに、と思う。
そんなことを口にすれば
きっと貴方は困ったように笑うんだろう。
とてもとても寂しい笑顔で。
そういう顔はあまりさせたくないのだけれど。
でもそれが私なのだ。
愛のなかで首をゆるゆる絞めていく。
この皮膚の下を流れる血液、脈動する命。わたしのもの。
嗚呼、愛しているのだ。
こんなにもこんなにも。