言葉日記2
Tsu-Yo

【こころいき】
映画のチケットを買おうと
列に並ぶ私の前に
「心意気」が割り込んできた
実にけしからんことである
文句を言おうとして
口を開きかけた私を
「心意気」は睨みつけてくる
鼻息が荒い
うでも太い
まあいいや
時間なんて腐るほどあるし
急いでいるわけでもないし
なんて意気地なしな自分
今日は「心意気」に負けた


【あらぶる】
お隣の部屋のベランダに
「荒ぶる」が干されている
太陽が眩しい日曜日の午後
私もベランダに出て煙草を吸う
部屋の中から
ボブ・ディランの声が溢れてくる
やさしい風が「荒ぶる」を揺らす
煙草の煙がせせらぎのように
青空へとのびていく
今日も世界は平和ですね
と「荒ぶる」に話しかけてみた
本当は世界のことなんて
何一つ知らないのに


【ねびえ】
「寝冷え」と別れた
もう何年も一緒だったのに
お互いに言いたいことは
たくさんあったけれど
それらはすべて 
さよなら
という短い言葉に
変換するしかなかった
「寝冷え」がいなくなった
この部屋はひどく寂しい
一晩ぐっすりと寝れば
こんな気持ちも和らぐだろうか
そうでないなら
明日なんか来なくていい


【がんそ】
動物園の檻の中には
「元祖」が入れられていた
檻の中ってのはさ
犯罪者が入るところじゃないのか
そんなことを考えると
もうたまらなく
泣きたい気持ちになってくる
この動物園には
子供の頃も来たことがあったっけ
あの時はどんな気持ちで
檻の中を見つめていたんだろう
そんな昔のことは
もうすっかり思い出せない



自由詩 言葉日記2 Copyright Tsu-Yo 2007-11-08 17:32:54
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