荒れ野
木立 悟





水の空の
あおむけの
限りなく分かれる
さざめきの無の


道標を欠く
夜の星狩り
蒼にひらく
火照りの腕


油の片手
灯すまもなく
指はかがやき
荒れ野を照らす


膝の裏側 触れては消える
やわらかさ かたさ
とめどなさ
残るもののない とめどなさ


狭い水を ただ幾度も
まわりつづけるだけなのに
見たこともない笑みばかり
見たこともない笑みばかり


消え去るものは消え去らず
とどまらぬもの ゆらぎとどまり
しあわせの輪郭を重ねからませ
ふせたまぶたのかたちを運ぶ


突き放すことのできなかった
小さな声が唱いはじめて
蒼や銀を手わたしてゆく
朝へ朝へ手わたしてゆく


かなわぬ願いが
めぐり めぐり
冷えた片目に添う耳となり
雨の行方を聴いている


手の空と背の空のはざま
何もない地をすぎる空白
丘の水と わずかな緑と
遠い雨に照らされる


おのれを隠さぬ痛みのなかに
砕けゆくもの 星を追うもの
またひとつ またひとつ
荒れ野を越える















自由詩 荒れ野 Copyright 木立 悟 2007-11-07 15:16:23
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