「二重の夢」
菊尾

明日きっとこの時間に思い出す
描写するなんてとても簡単なこと
次から次へ浮かんで消えない情景は重なりあって
何枚でも頭の中で現像されていく
三拍子のあの曲を君が口で真似てみせた
それは僕も好きな曲だった

公園の木馬が揺れる
シーソーの傾きが夕暮れを隠した
子供に戻れるのは子供を知っているから
ジャングルジムの骨格の中
空間を幾つもまたいでいるような感覚

毛布をかぶって身体をまるめて
秘密の話をしながら眠ったら
夢の世界で再び夢を見た
二重の夢
外殻を割って潜りこんでしまった
穴から内側の夢が洩れだして行く
そういう夢なのか
そういう現象なのか
目が覚めてもそれは分からないまま
目が覚めているのかも分からないまま

インクで小さな球体を落とすのはいつも午後
滲ませて広がらせたコレはその眼にどう映る?
月面兎は影絵で誰かがそう見せているだけだよ
真夜中のみに開かれるサーカスを覗きに行こう
レトロでモダンな服装で
アンティークで飾られた森を抜けて
束の間の向こう側を満喫してみませんか


透けて見える水草が踊る
約束を果たしてまた約束が交わされる
水面に幾つも波紋が広がっていく
この世界にある美しさの中だけで
僕らは呼吸を繰り返している


自由詩 「二重の夢」 Copyright 菊尾 2007-11-07 07:12:25
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