ひとつの月
松本 涼

赤い川縁を歩いていた時
僕にとっての君と
君にとっての僕が
同じだなんて信じてた

夕暮れの合図が
街に鳴り響いた時も
どうにもならないことなんて
どこにも無いって信じてた

月がひとつだけ

確かにその時僕らの上には
月はひとつだけだったけれど

きっと明日の空には
いくつもの月の中から
飛び切りの月を選んで
一緒に浮かべられるって
信じてたんだ

けれどもうそこに僕はいない
もちろん君もいない
哀しくはない

僕はここで歌ってる
君もどこかで微笑んでる

僕らはもう何も
信じなくてもいい

僕は僕の
君は君の
飛び切りの月を創ればいい

そうしていつか赤い川縁で
見せ合いっこしよう










自由詩 ひとつの月 Copyright 松本 涼 2007-11-05 21:39:04
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