鏡に映して
渡 ひろこ

はにかんで笑う アノコの
やわらかな心のヒダを斬りきざみ
助けをもとめるノドブエを噛みくだいた


アノコに突き刺した
痛みと悲しみの
鮮烈な返り血を浴びたとたん
それはドス黒くキミに染みていく


(映してごらんよ 鏡に)


キリキリと耳まで口が裂け
だらしなく舌を垂らし
ギザギザのとがった歯から
イヤな臭気を放つ姿を





うそぶく手で羊の皮をかぶっても
まっすぐな光の反射
あからさまに照らされるキミ





醜くイヤシイ
ひと の かたち
ふるえる指先の
隠れた半月





(だけどそれさえも見ようとしないね
見るのが怖いんだね、鏡を)



でもね



キミがこの世で最初にみたのは光
母親の胎内から出て
温かな血にまみれ
眩しさに感動して泣いたのは
アノコも同じ




力を抜いて
ふぅーっと
大きく深呼吸してみて


キミも抱える
歪んだ軌跡を
そっとなぞってあげるから


ウザイなんて思わないで
キミ自身の魂の輪郭にもどるだけ




ぎすぎた自分を知るために




“タダシイ”角度の
プリズムつかんで


瞳を開いて
鏡に向かって











自由詩 鏡に映して Copyright 渡 ひろこ 2007-11-05 19:21:24
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