秋、
イツリ
雨が
秋、という題名の絵の上に降り注ぐ
細かな水滴が
キャンバスをしっとりと濡らし
少し滲んだ秋が
白い空のバックの中、
浮かび上がる
辺りは静まりかえり
落ち葉のカサカサする音も
どんぐりがコロコロ転がる音も
もう聞こえない
聞こえるのは
降り注ぐ秋雨の音と
冬、を予見する木枯らしの音
湿った木の匂いが
キンモクセイの香りと混じり合い
子供の頃、先生に怒られた日の帰り道の記憶を呼びおこす
秋、は絵の具がすぐに乾いてしまうから
筆を頻繁に濡らさないといけない
公園で
はしゃぎながら「あきみつけ」の宿題をする男の子を眺めつつ
21年前同じ季節に生を受けた、あなたへ贈る絵を描いた
表ではダウナーな色など見せることはない
底抜けな明るさの裏でいくつもの悲しみを背負った
あなたを思い浮かべながら
いつだったろう
あなたの子供の頃のアルバムを見て泣いてしまった
小さな手でぎこちなくピースをする幼い頃のあなたの写真
半袖を着ているのに
どこか秋、を感じた
あなたはこの頃からもう
失うことの悲しみを知っていたんだね
写真の上に落ちた涙をそっと拭うと
幼い頃のあなたが笑った気がした