不可能物体
狩心

三次元で存在できないものは
二次元で存在できた
手元が狂って黄色い場所に着陸した/飛び出た剃刀
ああ、寒い
冬の風が力強く脈打っていた
お尻を向けられた顔面に
煙草の煙が雲散霧消する
入れ代わり立ち代り
清算されていく焼肉の音
家まで三十分、駅まで三十分
そのジーパンいいね、何処で買ったの
夜の自転車は日付変更線を越えて
めんどくさい
煙草ダイエット
折り畳み傘に入り切らない折り畳まれた体
気分が悪いと言いながら
気分がいいと酒を交わした
腹を抱えながら赤い光
ああ、白い壁に
縦横規則正しく引かれた直線、そして溝
雨が滴ってダムの水面が枯渇する
月の見えない夜空に寝そべって
マーキングされた俺たち
黒子が増殖した/足がぶつかった
ごめんなさいも言えず
携帯メールを考えられない速度で打ち続けた

針に引っ掛かった魚達の群れ、儀式
おい、口を開けたまま
次の各駅停車の夢
駅のホームで見送った
瀬戸際の中華街、ハングル
脱更衣室、脱車輪
突然いびきが偽装され
頭のハゲを手で隠した
ああ、新聞を読んでも流れてこない
心の奥底に
何も流れてこない


自由詩 不可能物体 Copyright 狩心 2007-10-31 09:38:14
notebook Home