ちるどしつ
カンチェルスキス








 ぼくはすきなひとがいていなくなって
 かなしむことができませんでした
 ぼくはおはなにみずをやるのがすきで
 まいにちそうしておはなはかれました
 ぼくにはあながあいていて
 ななめになったおひさまのひかりも
 ななめのままぼくのあなをとおりぬけて
 じめんはわらいころげました
 ぼくはいつもあなのなかにはいりたいと
 おもってたけれど
 ぼくにはあながあいていたから
 ぼくのあたまはこんがらがりました
 こわかったんだけどぼくは
 じぶんのあなをのぞいてみました
 つめたいかぜがかんじました
 てをいれることはできませんでした
 あなのむこうにだれかすんでるかもしれないと 
 ぼくはおもいました
 じっとのぞきこみました
 てをふるものはだれもいませんでした
 みえるけしきもなんだかありふれていました
 やっぱりつめたいかぜがふきぬけていて
 まるでちるどしつのようだとおもい
 こんなのいらないと
 ぼくはおもいました




 とおりかかったどうぶつたちが
 あなをのぞいては
 つまらないかおをして
 さっていきました
 みせものじゃないんだぞと
 ぼくはおもいました
 だけどきにしませんでした
 かれらはこういうものめずらしいものが
 すきでした
 だからぼくはわざと
 このあなはどうですかとすすんでみせたぐらいでした
 でもかれらはそうすると
 すこしうっとうしがってかおをくもらせました
 そしてきょうみをもったばあいでも
 じぶんたちのせいかつにいそがしくて
 おもったよりはきょうみがないようでした
 かれらはすきなそぶりがじょうずでした
 なんでもすきだということがとてもじょうずでした
 なんでもすきだということが
 ひとつのおしえみたいになっていました
 ほんとうにすきなものはなになのか
 わかってるひとはだれもいませんでした
 ほかのものにきょうみがうつると
 そちらのほうにながれていきました
 のこされたかんげきのことばが
 ぼくのあなをおおきくしてるようにもぼくは
 おもえたりしました
 だけどそれはきのせいでした
 かれらははじめから
 ひとつのてくにっくをくししてるだけでした
 しんでしまわないためのてくにっくを
 じぶんなりにくししてるだけでした
 そうしなければ
 みんないきていけませんでした
 ぼくもそうでした
 ぼくはしっていました 
 いつものことでした





 もうふをかぶってまるまると
 あながちょうどかおのところにきました
 つめたいかぜがほおにふれて
 だからぼくはいつもさむいおもいをして
 このかぜをどうやってとめられるんだろう
 このあなをどうやってうめられるんだろうと
 かんがえました
 わたをつめおゆをながしかーでぃがんをきても
 あなはあなのままでした
 あなのあいてるぼくのからだには
 きせつがひとつしかありませんでした
 ちるどしつのようなふゆが
 いちねんじゅうでした




 ぼくにできることは
 まだたくさんありました
 でもぼくはなにもしませんでした




 あなのあいたぼくが
 まちをたいらにあるいています。







 


自由詩 ちるどしつ Copyright カンチェルスキス 2004-06-09 14:42:49
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