手鏡
九鬼ゑ女

往生際にしゃがみこみ
手鏡に覗く ためらいが
すうーっと横を 過ぎる気配      /よぎる

「いいのです」と 言いたいけれど

知らぬ存ぜぬ通せば
あきらめて 腰をあげるかとも
想う 佇むその影が

「いいのですね」と 問い掛けてくる

魔が差すという言葉が
息を吹き返して
返ってコトをこんがらがらせるので

「いいのですよ」と 言い聞かせながら

べとべとと体躯に          /からだ
黏る あなたの空気を        /ねばる
わたしは また吸い込んでしまう

もどかしいのです。


自由詩 手鏡 Copyright 九鬼ゑ女 2007-10-26 17:52:36
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