釣り糸を垂れる
アハウ

靄が立ち込めて
息を止めるほど
鈍く 濁った 沼

曇りの空を
正確に映し出す
水の留まり 
大地の無意識は 静止していた

息継ぎが罪悪のような 静寂に
時として 陽射しは落ちて
小鳥達はさえずった

その声が 湖面に反射して
さざ波は立ち
風は景色を弛緩させ
私は息をはじめる

水をかいで 
魚が白い腹を見せにやって来る
波紋が岸まで打ち寄せ
小さな音をたてると
以前にましての静寂


轟音のように
静寂が訪れて
静寂が押し寄せて

鼓膜に沈黙は圧力として
現に在った


釣り糸を垂れよう
輝くナイロンの糸を結ぼう
真紅の浮きを
この静寂に 浮かべて

対話を試みる
この沼と

張りつめて 鈍い大気を切って
竿のしなり音
浮きが湖面に浮かび 音

今 世界は これだけだ


自由詩 釣り糸を垂れる Copyright アハウ 2007-10-26 16:39:54
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