『ままごと』
東雲 李葉
パパ、ママ、あたし、弟。どこにでもありそうな構成。
それぞれの役割を演じながら赤い繋がりを営む。
大人の真似をしたがる友達の中で、あたしだけが、そのまま子供でいたがった。
好き放題に我儘言ってあたししかいないみたいなシートの中が心地よかった。
パパがお仕事の間は弟しか見ないママを見ているしかなかった。
知ってた?あたしずっと独りぼっちなの。
お昼間の小さいママはあたしも見てくれるけど。
夕焼けチャイムがいつも怖かった。
行かないで。パパとママ。夜も傍にいて。
烏が螺旋を描いて飛んでゆく真夜中。
黒猫の長い影は街のネオンにさらわれる。
金色の月の光。浮かぶ空にはまるで穴が、開いてしまったようで。
そこから覗く灰色が微笑んでる。やめて、こっちを見ないで。
誰かノイズを鳴らして。不吉な羽音だけじゃ心細いわ。
気付いて、あたしずっと独りぼっちなの。
お隣に誰も居ないシングル・ベッドで。
小さな声の応えはいつまで待っても返らない。
今宵も昼夜の温度差に震えながら仮初めの食卓で独りおままごと。
やけに明るいリビングでプラスチックのお箸とお茶碗だけが鈍く光っている。
名前も呼んでもらえない娘役があたしなの。
自由詩
『ままごと』
Copyright
東雲 李葉
2007-10-26 15:14:46