かえる
こしごえ

午前零時の産声が
真夜中を、とおりすぎて
青雲でゆれていました
しかしながら
その姿を見た者は
だれひとりとしていなかったのです

川岸に転がっていた小石を持ち帰り
庭のすみっこに置いてあります
今日はその石に
小雨があたったりあたらなかったり。
丸く、青みを帯びた
灰色にてんてんと黒く小さく
濡れては乾き 乾いては濡れ、て
手をあてると無機質な肌に
私の体温が 伝わりまして
ひた ひた ひたと暗い内部から視線が
しーっと浸透しながら
逃げ場の無い体温を手まねきしている
のが聞えて、影の檻はちょっとずつ光景を
告白していく
仄明りの空のもと
私が、小石にかえります

おもいでを葬った小さな霊園で
しろい花を一輪、手折りました
そのゆびさきが白く空を切るバランスで
階調を(一羽)輪舞しながら
ふ きだされた無声音が
(石の光沢する)音階を
のぼってゆく
青ざめつつも すこしも震えずに
一段、一段 沈黙していく
静寂へとなり 果てていき
うつろな空が、おだやかに微笑している
青みがかった鈍色の中の
う、しろで
無数に扉のしまる音……を聴いた
とたん。空が晴れて
私の後ろ姿が、消えました

またひとり
しゃらしゃらときらめく
星星の無限花序で
ほうき星が流れてひとすじ
小さく「 ぁ 」と鳴くのです









自由詩 かえる Copyright こしごえ 2007-10-25 11:26:43
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