秋休み
服部 剛
3日前に職場で腰を痛め
うずくまったまま動けず
車椅子に乗り
整形外科へ搬送され
9年目にして初めて
10日間の秋休み
今日も午前10時の朝食を終え
ほがらかな日のそそぐ
秋の小道を散歩する
見下ろす川の堤防に
一羽の白鷺は佇み
そろり そろり と細足で
太陽を映す水の鏡を歩きつつ
時折鋭い嘴で
あめんぼう等を
瞬時に銜える
見上げた空から
くるっくっく
ぱたぱた羽ばたく一羽の鳩が
目線の先でひるがえり
わたしの背後に飛び去った
( 今頃職場の同僚は
( 老人ホームのお風呂場で
( 曲がった背中の数々を
( 汗を流して磨いてる
棚の上から落ちたような
予想外の秋休みに小道を歩く
「何者でもないわたし」
くるっくっく
振り返った
背後の空の遠くに消えた
あの鳩の言葉のように
「訳せぬもの」
がこころにふくらむ
秋の午後
高い空から
街路樹の枯葉とともに
降りそそぐ
(風のうた)に立ちどまり
わたしは胸に
手をあてる