その(名前)を、呼ぶ
山中 烏流

瞳を震わす息吹を
すべからく
祈り、と、呼ぶ
 
そんな
少女の小さなまつげは
時折、瞬きとは別に
揺らぐことがあるという
 
胸元で組んだ手の
その周りに、
祈りは宿るのだろうか
 
 
とにかく私が
するりと撫でた頬は
恥じらいを覚えるには
あまりにも紅く、染め上がる
 
振り向いた瞬間、
何かを許しながら
枯れ落ちていくような
そんな気が、した
 
 
舞い上がる髪の
見詰める先、全てに
祝福が宿ることを
少女は
まだ、知らないでいて
 
まつげを揺らす
私の輪郭を追っては
瞳を泳がすことを
飽きもせずに
飽きも、せずに
 
探している
 
 
指差した先に
必ずしも、私は
 
息づいていない
いない、から
 
 
触れようとした手の
外に溢れるように
世界が揺れていることを
少女の瞳だけは
少なからず、理解している
 
瞬きとは別の
振動で揺らぐまつげに
答えをしまいこんだまま
胸元の手を
ほどくことは、しない
 
私が触れた少女の
祈りは、あまりにも
あまりにも、
 
 
小さく呟いた私の名を
 
一体、誰が
決めたのだろうか。


自由詩 その(名前)を、呼ぶ Copyright 山中 烏流 2007-10-23 10:31:09
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