俯瞰して、町の路地をなぞる
水町綜助

いつもの路地で歩を止めて
通りの向こうに目を遣れば
隙間だらけの
小さな町を
関係のない
繋がり方をしている
建物と僕と真鍮と
霊魂とドブネズミと太陽と

一つの器に雨が降る
笑顔でもつれて
ささくれる
僕は
やせてしまったよ

真横から見た眼鏡レンズの厚さ
その気の遠くなるような距離に
刷り込められた摺り潰れた微かな気泡は
真空なので
道理で恩愛などは
生まれない筈だ

瞳はしかし町を映す

オオスカシバが花の蜜を吸うように
飛び
理髪店の螺旋広告を逆回りする秋が
来たから
何だと言うのか
何も喪失していない

この入り組んだ生家の中で
煙の息を吐き
モルタルにつながれた壁を透かして思うことで

ああ
この箱は
四角四面の文字通り
真空の弁当箱だよ
おやつはまだか
くしゃりと
腹がへこむ

VHS
βのビデオテープ
使いものにならないがらくた
脳味噌がにくまんであるように
ビデオデッキでにくまんを再生することは出来ない
今のところ

僕はやせてしまったよ

白い紙の上に地図を描いて
紙粘土でビルを作り終えたらマッキーで色を塗ろう
カドヤでコーラは買わずに
少なくとも
12色
塗り分けて
使われない色が幾つかあって
それは何なのだろう
ああ
この模型には
空が無い
だから
ずっとうえを見上げている姿の人形を
ひとつ作って置いて
逆説的に広がった青い空に
今度は鳥が必要だね
だから鳥を目で追う人を作ったけれど
置いてみたら路地の先を見遣る人の
首と視線の角度だった
町の中で

うまくつくれなかった


自由詩 俯瞰して、町の路地をなぞる Copyright 水町綜助 2007-10-21 18:03:43
notebook Home 戻る