拡大コピーの時間
合耕

昨日 いつも市場で会う少年と水遊びをしたとき
「お兄ちゃん、腕まくりが似合うね」って言われて
戸惑って
戸惑ってしまったまま 朝が来て起き上がる
いつもと同じように寝床に向かい
膝を曲げ 腕を伸ばし 反魂の跡を探る僕の顔を
どこかにいる誰かが 下から覗き込んでいるのなら
そんなことを考えるとき いつも思う

僕達は いつか必ず恋してしまう

洞窟の入り口に吹き込む風は 
僕と 僕の父さんの失敗した企みが見ちゃいられなくて
蓋をするみたいに
なぎ倒さずに なぎ倒す いろいろ
笑えるけど まだ笑わないでいる僕は
ファー付きのジャンパーに青いシャツで
小高くなった砂丘に上り 君達と会い
そこでまた違う風を受ける

砂粒は 会う度に僕達をずらしてゆく

いつか破裂する糸電話の糸で
誰かに話しかけていてもいいのかな
青空を見なくても保存されるような
驚いた顔のまま 触り合っているみたいだ
あの娘が魔女の死体片付けるの手伝ったり
あの人に刀の抜き方を教えてもいい
やっぱり僕達は恋してしまうのだから
もしも君の顔が
ホバークラフトに乗り込み カーテンの後ろから飛び立つ神様に似てきても
お互い 影を踏み合うだけだ
何もわかってこないまま 
笑顔が綺麗になる

君が触る心臓も 僕が触る心臓も
全て風に吸い込まれてしまい
もう一度砂丘に上る
砂粒が通り過ぎ 忘れられてしまいそうなときにまた思う

僕達は いつか必ず恋してしまう


自由詩 拡大コピーの時間 Copyright 合耕 2004-06-06 23:39:38
notebook Home