ハイヒール
yoshi

君は強いね

同僚の男性社員にそう言われた日

ハイヒールのかかとが折れた

折れたかかとを拾い上げ

折れたままのハイヒールを履いて

電車に乗った

折れたほうのハイヒールのせいで

そのまま立つとバランスが悪く

爪先立ちでつり革につかまった

他人のミスで怒鳴られて

頭を下げながら過ごした年月が

私をここまで強くしたのかな

そう思いながら

車窓に映る疲れた30おんなの顔を眺める

愛する人を

追いかける事も出来ない

離れていくあの人に

泣いてすがる事も出来ない

いくら評価される仕事をしても

埋まる事の無い隙間を

今でも心に隠し持ち

私は明日もハイヒールを履く


私は強い

自分でもそう思ってた

ハイヒールのかかとを響かせ

スーツを着こなして風を切る自分が

誰よりも強いと思っていた

あなたに会って

あなたと愛し合い

あなたと別れたときから

私の心の中のハイヒールは

かかとが折られたまま

そのハイヒールを私は

いつまでも捨てることができずに

今でも私は

バランスを取りながら生きている

強い自分と

弱い自分で

ぐらぐらしながらも

なんとか生きている


自由詩 ハイヒール Copyright yoshi 2007-10-17 00:34:30
notebook Home 戻る  過去 未来