どうぶつ
木屋 亞万

原形を留めたままで喰う
残酷さが消えないうちに
生きていたものを殺して
口に放り込んだ事実を
背後に捨ててしまわないために

出会わなければ生きていられた
腹の中の栄養素たちは
かつて多くの食物を得ていた
一日一度では足りぬのは当然で
見えない鎖の根元はとてつもなく広い

生命の死による臭みを消すために
覚えた調理という方法は
生活に必要な新鮮な死体達を
あっさりと物に変えていった
次第に自身の生命の臭みも薄れていく

臭気なき身体を美しいと呼ぶべきか
体毛薄き身体を美しいと呼ぶべきか
猿を醜くした薄毛の自身は
包み隠す衣によって
さらに生死を遠ざけていった

自然に帰れと言うけれど
まだ自身はそこにある
背を向け耳を塞ぎ忘れようとしているだけで
目を剥けば痛みと共に臭気も生死も
すぐ近くに感じられるようになる


自由詩 どうぶつ Copyright 木屋 亞万 2007-10-15 01:06:12
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