鯨のペニス
草野春心

  中学生の想像力は
  万物を強姦している
  おさまるべき枠組みを求め
  有機的な快楽を知りたがり
  夕暮れの廊下を絶え間なく這い回る



  古惚けた水族館に
  佇む 巨大な鯨のペニス
  かつて自身が性欲だったという事実は
  時のギロチンによって切り落とされ
  それはただ静かに存在している



  概念だけで完結しているものは
  浮かばれない霊魂のように忙しい
  内実の失われた表象にこそ
  まことの静寂が宿る




(着想 : 村上春樹氏「羊をめぐる冒険」第三章第一節より)


自由詩 鯨のペニス Copyright 草野春心 2007-10-14 22:45:42
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