乾いてゆく風があった
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乾いてゆく風があった
薄れてゆく光もあった
綺麗にされた夏だった

目の前に拡がる
どこか懐かしい景色に
なぜかふるい歌を思い出し
海に腕をさし入れる
かなしみが群れているのは
きっとあの雲を抜けたあたりで
のこされた魂も
そのすこし上あたりに舞っていて
よろこびがうまれたのもあのあたり

動きはじめた手足があった
赤ん坊を抱きかかえる友に
父親の顔というものを
はじめて見た気がした
世界を積み上げてゆく
欺かないことば
あまい息が日に焼けてよりにおう
寝床にほおづえをついて見ている
ぼくのこのいくぶん打ち疲れた
心臓の音が聴こえているかい

波打つ草原をはしり
泡立つ都会でおよぐ
そこに生きる人達の
きっとくる明日を信じていたいから
空を眺めていると
ふと願わずにいられない
いつの日かこんなぼくを
感傷が成長してゆく輪にするだろう
それは罪から研ぎ出された
九月の影にうかされただけの
忘却に過ぎないものだとしても

静かに樹皮は冷えていった
穏やかに砂漠は拡がっていった
そして秋は今年つばさがなお空高い






自由詩 乾いてゆく風があった Copyright soft_machine 2007-10-13 18:19:24
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