渡り鳥に捧ぐ
udegeuneru

子供の頃から場当り的に生きてきた俺は
ドブネズミのように美しくはなれない
ビルの屋上から町を眺めている

ここから見下ろすこの町の風景は煌めいている
ドライブする恋人たちが全速力で俺を祝福してくれる
小高い丘からこちらを見てきょろきょろと、ツグミが歌っている
キンモクセイの香りをまとった風が俺の額にやさしくキスをする

そんな時こう思うんだ
俺はひとりじゃないって
何にも心配することはないって
まあ、どれも全くの嘘なんだけど

ドブネズミのようになれないのなら
せめてあの夕焼け空の一部になって
混ざり合って溶けてしまいたい

その場かぎりの取繕いも
醒めながら見ていた夢も
唇からこぼれた歌も
天使のような微笑みも
ちょっとだけ、感じたあの感じも
今じゃぼんやりして
いい思い出になってしまった

長い夜が近づくと
馬鹿になりたくなるから
神様とおんなじ、おどけたポーズで

時々この存在の全てが
夢のようだと思うことがある
信じられないよな
これが現実だなんて

笑いがこみ上げてきた

おい見ろよ
あの綺麗な
夕陽の赤


 
  

 


自由詩 渡り鳥に捧ぐ Copyright udegeuneru 2007-10-11 12:45:33
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