ことば
アンテ


ぜったいにはなしちゃいけないって
ちいさいときから
なんどもいいきかされていたのに
ふときがつくと
てをはなしたあとだった
あわててまわりをみまわしても
ておくれだった
わたしのことばは
どこかへいってしまった

きんじょをさがしまわってみても
ことばはどこにもみあたらなかった
こうえんやとおりでであったひとたちは
みんなしっかりと
じぶんのことばとてをつないでいて
すれちがうとき
はなしかけてくれた
なにをいっているのかわからなくて
わたしがこたえられないでいると
みんなこまったようすで
かおをそむけた

しかたなく
ことばのにがおえをがようしにかいて
げんかんさきにはりつけた
ゆうがたまでに
よにんがげんかんのべるをならして
えをゆびさしてなにかをいった
いみはわからなかったけれど
たぶんこれはなんだときいているのだろう
みぶりてぶりで
わたしのことばのことをつたえようとしたけれど
かれらはくびをよこにふって
とおりをさっていった

とてもしずかによるがふけて
ひとりねむれずに
ふとんにくるまっていると
ちいさなちいさなおとがそとからきこえた
はしりでてみると
どろまみれになったことばがひとり
うずくまっていて
わたしのことばではなかったけれど
とにかくうちへいれて
おふろばできれいにあらってあげた
はなしかけてみても
ごめんなさいごめんなさい
をくりかえすばかりで
もちぬしのこともなぜはぐれてしまったのかも
とうとうはなしてくれず
つぎのあさはやく
ことばはなんどもあやまってから
わたしのいえをでていった
とつぜんなみだがあふれだして
とまらなくなって
なんでいえなんかでぐずぐずしているんだろう
ばかばかばかだおおばかのとんちきちーだ
いそいでみじたくをした
ことばをさがしにいくことをがようしにかいて
げんかんにはって
ほうこうもいきさきもかんがえずに
とにかくとおりをかけだした
あさひがまぶしかった




自由詩 ことば Copyright アンテ 2004-06-05 21:11:31
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