失恋のサーカス
hiro

ドラムに合わせ雨が降り
やがて収まると静かに
霧が会場を包み込んだ
うす く うすく

疎らな客席が冷たく
こちらを眺め
舞台を突き刺している

照明は雨霧をかわし
なんとか会場を覆った


彷徨うように揺れる空中ブランコ
恋心は必死でしがみ付いている
タイミングを窺うが
向うのブランコに中々移れない
手を伸ばせばそこに見えるのに
はるか遠くにあるよう


緩んだ時空の綱の上
過去の恋愛を時折振り返り
力が抜けたようにまた前を振り返る
一歩がとても小さく
先がずっと遠くにあるよう


霧がいつしか色濃く染まり
癒すはずの負イオンが歪み合い
胸を苦しめる


ピエロはそれでも
今を何とか乗り越えようと
目の下に溜まった涙を零さないようにと
ボールの上でよろめきながら
恋心を操っている


自由詩 失恋のサーカス Copyright hiro 2007-10-07 06:09:24
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