ドッペる
木屋 亞万

世界には自分とおんなじ顔の人が三人いるらしい
こいつらはおんなじ顔だから見つけやすいのだが
世界に放たれた俺の分身達は顔が違うぶん見つけにくい
遺伝子がおんなじのクローンであるはずの分身達は
顔性格趣向体型が全く違うのだ
遺伝子は写し取ったように同じなのだが


そして今日俺のコピーと出会ってしまった
何もかもが同じで違うところを見つけられなかった
あいつがいれば俺なんていなくても構わないではないか
じゃあ後たのむわと言って死んじまっても
誰も消えた命に気付きもしないだろう


あんた落第らしいぜと笑うコピーは
違いなんてないであろう俺を見下している
影が焼け跡のように黒く纏わりついている
変わりはいくらでもいるんだよ
すれ違いざまに耳元に残された声
つられるように振り返る
俺のコピーは重そうに背中を引きずっていた


あなたにはたっぷり自分探しが出来るようにしてあるからね
満面の笑みでそう語っていた母の
自分探しは間違いなく間違えている
世界に俺はあと何人いるんだ





自由詩 ドッペる Copyright 木屋 亞万 2007-10-04 23:49:49
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