小粒な実
千波 一也



きみの
笑顔の理由を
そっと教えてくれないか

ぼくらはそれを
上手に広げてゆける
知らないうちに
新しくする


ささいな物を
拾い集めてゆくことが
ぼくらを作り
それとは知らずに
ぼくらは作る
ぼくらを
作る

そういう意味で世界は
途方もない

途方もなく哀しくて
途方もなく可笑しくて
それを誰かと
分け合いたくて
あてなき寒さが募りゆく

みんな孤独だ
それも恵まれすぎた孤独だ

たとえ小粒でも
実のあることが
ひとを優しく変える

みんな
不慣れに幸福だ

恥じらいも温もりも
蔑みも後悔も
ちいさな蕾
微笑みの蕾


今すぐになんて
わからなくてもいい

古いものから順番に
新しくなることだって
きっとある

知らないうちに
小粒な実なりの
夢の見頃に





自由詩 小粒な実 Copyright 千波 一也 2007-10-04 18:20:40
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