終点
霜天
その路線の終着駅は海沿いで
寂しい駅舎には
潮風が染み付いていた
流れている景色が
ゆっくりと落ち着いて
溶けていた車窓の奥で
海が空にゆれている
向かい側の席から
ゆっくりと老人が立ち上がる
がたんと大きく電車がゆれたが
微動だにせず外を見ていた
いつかたどり着く終点は
こんな景色だろうか
あの老人のようにしっかりと立つには
今までの人生を何倍にすればいいのだろう
次は終点です
どちら様も落し物お忘れ物なさいませんよう・・・
いつもの口調のアナウンス
長いとはいえないここまでの道
忘れ物ならずいぶんとある
これからどれだけ落としたら
あの老人に追いつけるだろう
寂しい海沿いの終着駅
よく見れば花に囲まれて
そこは確かに光っていた