終点
霜天

その路線の終着駅は海沿いで
寂しい駅舎には
潮風が染み付いていた

流れている景色が
ゆっくりと落ち着いて
溶けていた車窓の奥で
海が空にゆれている

向かい側の席から
ゆっくりと老人が立ち上がる
がたんと大きく電車がゆれたが
微動だにせず外を見ていた

いつかたどり着く終点は
こんな景色だろうか
あの老人のようにしっかりと立つには
今までの人生を何倍にすればいいのだろう


次は終点です
どちら様も落し物お忘れ物なさいませんよう・・・


いつもの口調のアナウンス
長いとはいえないここまでの道
忘れ物ならずいぶんとある
これからどれだけ落としたら
あの老人に追いつけるだろう

寂しい海沿いの終着駅
よく見れば花に囲まれて
そこは確かに光っていた


自由詩 終点 Copyright 霜天 2004-06-04 18:41:28
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