七夕
狩心

重力を凄く感じて、体がズシリと重い、ずっと続く倦怠感
あの頃の私の体は、何の言う事も聞かなくなっていた
それを余所に君は、蝶のようにヒラヒラと軽く舞って見せる
妖精みたいな君が、どうしてこんな薄汚い町にいるんだろう
たぶん君も、この虫籠の中から出られないんだろう

君は生きる為に客の前に立ち、パフォーマンスして見せる
そしてそれに、幾らの価値があるか値踏みされる
大抵それは、君が一人で生きていくのに精一杯な程度の価値で、
君の愛する者も、この町も、守れないだろう
君はそれに悩み、毎日涙を流している
私はそれを知っている

私が自殺しなかったのも、君に出会ったからだ
その恩は一生忘れない

明日は君の誕生日だね
君は自分の本当の誕生日を知らない
だから二人で決めたんだよね
七月七日の七夕を誕生日にしようって
君は言ってた、二人で決めたことが本当だって

私が君に「何か欲しいものある?」と聞くと、
君はいつも「何も要らない」と言って、黙ってしまう
その沈黙の意味を、私は知っている

このままずっと一緒にいよう・・・

誕生日を祝うなんて事は、在り来たりな事だけど、
そこからまた、何かが始まる気がするんだ
明日は二人でささやかに、織姫と彦星の人形劇をしよう
天の川にゆっくりと、橋が架かるのを想像しながら









自由詩 七夕 Copyright 狩心 2007-10-03 17:19:44
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