七夕
狩心
重力を凄く感じて、体がズシリと重い、ずっと続く倦怠感
あの頃の私の体は、何の言う事も聞かなくなっていた
それを余所に君は、蝶のようにヒラヒラと軽く舞って見せる
妖精みたいな君が、どうしてこんな薄汚い町にいるんだろう
たぶん君も、この虫籠の中から出られないんだろう
君は生きる為に客の前に立ち、パフォーマンスして見せる
そしてそれに、幾らの価値があるか値踏みされる
大抵それは、君が一人で生きていくのに精一杯な程度の価値で、
君の愛する者も、この町も、守れないだろう
君はそれに悩み、毎日涙を流している
私はそれを知っている
私が自殺しなかったのも、君に出会ったからだ
その恩は一生忘れない
明日は君の誕生日だね
君は自分の本当の誕生日を知らない
だから二人で決めたんだよね
七月七日の七夕を誕生日にしようって
君は言ってた、二人で決めたことが本当だって
私が君に「何か欲しいものある?」と聞くと、
君はいつも「何も要らない」と言って、黙ってしまう
その沈黙の意味を、私は知っている
このままずっと一緒にいよう・・・
誕生日を祝うなんて事は、在り来たりな事だけど、
そこからまた、何かが始まる気がするんだ
明日は二人でささやかに、織姫と彦星の人形劇をしよう
天の川にゆっくりと、橋が架かるのを想像しながら