大人の遊びかた
佐野権太

湿ったソファーに沈みこんだ
少女の
くちびるからもれる
母音の
やさしいかたちを
泡にして
水槽のふちに
浮かべている

*

贈られた模型を
にこやかに受け取り
持ち帰って
なごなごに破壊したあと
その細かく尖った破片の
ひとつひとつを接着して
うにのような戦艦を創りあげる
いやらしく笑う

*

おおひな ひゃらめるの
包み紙の
白濁したせかいに閉じ込められて
ひとつぶの重さに
かたかたとふるえている

*

ぱんの耳ばかりあたえて
二日で死なせてしまった
うさぎの
正しい飼い方を
冷たいいしにむかって
なんども復唱している

*

かつん、とささやいた
どんぐりの、みっ
しりふくらんだ
きみどりの涼しさを
くちびるから吸引している

*

きいろい白粉花おしろいばなをみつけて
うかれたゆうぐれは
湿ったつぼみのなかに
しのび込んで
人がゆきすぎるのを
こっそり観察している

ぽぅと生まれてみせては
所在なく
また潜り込んでいる

*

ぽくぽくと流れくだる
ひとつひとつを
すくおうとして
くゆりながら
逃れてゆく
ちいさな旋律のゆくえに
はな唄を
細く溶かしている

*

何もいいことがなかった大人が
ひとり
遊んでいる

あさひを
袖でらんぼうにぬぐいながら
しずかに
遊んでいる







自由詩 大人の遊びかた Copyright 佐野権太 2007-10-03 11:57:35
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