thom holic
かのこ

弦の錆びたかわいいギターは
今も部屋の隅で無抗力なまま
あたしの声は小さく
でも幾分か端正に響く
少し、寒さを思い出させるあの感覚
甘ったるいホットチョコレートは
少しずつ温度を失っていく

真っ暗な部屋で
仄明るい灯火だけを世界だと思い込んで
そこにいない誰かを想っては歌っている

“just don't leave me…”

奇怪な音を立てて震える冷たい窓

ゆるゆると昇っていく煙を追いかけて
温かい大きな肩を忘れられない
まるで、狂った仔猫の微笑み、あたしは
あの頃とちっとも変わっていないな、やっぱり、つぶやく


未詩・独白 thom holic Copyright かのこ 2007-10-03 00:24:20
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