擬態
Tsu-Yo

真夜中に突然、玄関が開いて自分が帰ってくる
という光景を、ベッドの中から眺めるのは
とても不思議な気分だ
ああそうか、俺死んだんだよな、昨日の朝
死因は自分でもよく分からないけれど、
きっと脳卒中とか心筋梗塞とか、
まあ、そんなところだと思う
生きている時は“死ぬ”ってどんな感じだろう
などとよく考えていたものだが、
実際、こうして死んでみると
“生きている”ってのがどんな感じだったのか
とんと思い出せない
ただ、死んでしまった俺にも、夜は無差別にやさしい
まるで初めからひとつのものだったかのように、
羽毛みたいな暗闇の中へ、そっと包み込んでくれる
ところで、家に帰ってきた俺は
トイレに籠もってゲエゲエ吐いている
どうやら酷く酔っぱらっているらしい
何か嫌なことでもあったのだろうか、心配だ


自由詩 擬態 Copyright Tsu-Yo 2007-10-02 23:39:56
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