きもち
アンテ


きもちをつたえようと
ことばをえらぶたび
むねのおくがずきずきいたんで
むねをかきむしるうち
かたいものがゆびにふれた
おもいきってひきぬいてみると
くすりゆびくらいの
てとらぽっとみたいなかたちのほねだった
むなもとにあいたあなから
ひゅーひゅー
くうきがぬけるおとがした

それいらい
きもちをあらわそうとしても
とんちんかんなことばしかでてこなくて
かんじることそのものは
ことばとはむかんけいなはずなのに
じぶんのきもちにじしんがもてなかったり
どこかひとごとだったり
ことばにふりまわされてばかりで
すっかりちょうしがくるって
へこたれてしまった

きおくをたよりにそうさくすると
ほねはへやのかたすみで
かさかさにかわいていた
むねのあなにおしこもうとすると
とちゅうでつっかえて
すきまからぴゅーぴゅーおとがした
むりやりおしこむと
むねのおくがきしんで
とつぜんおくまでつきささって
いきができなくなった
なみだやよだれをたらしながら
ゆかをころげまわっているうち
しだいにいたみがやわらいで
ゆっくりといきをすって
あーあー
おそるおそるしゃべってみると
いちおうじぶんのこえがでた

でももちろん
それですべてもとどおり
というぐあいにはいかなかった

でてくることばはどれも
きもちとほんのすこしだけずれているきがして
でもなにがおかしいのか
ことばであらわそうとすればするほど
ますますとおざかってしまった
それでもことばだけが
ゆいいつのしゅだんだったので
とにかくきもちをかきとめることにした
まいにちまいにち
ことばをならべていると
あたらしくかっためがねのように
それなりに
なれはじめているじぶんがいて
でもときどきおもいだしたように
むねのおくがいたんで
そんなとき
あなのあとからわずかにつきだしたほねを
そっとなでながら
このきもちをいつか
ことばでひょうげんできるひがくればいいのに
といのる
いのりということばがただしいのか
わからないけれど
とにかくただいのりつづける
ただいのりつづける




自由詩 きもち Copyright アンテ 2004-06-04 01:38:10
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