Ave Maria 
服部 剛

異国へ旅立つ 
彼の背中を 
小さい額の中から 
いつまでも 
亡き母はみつめていた 

手前に置かれた花瓶の百合は 
あふれんばかりに咲き乱れ 
いくつかの細長いつぼみは 
喜びに口先を開く 

両脇に並ぶ人々は 
独り悶えた暗闇の夜
彼に励まされた言葉を 
それぞれの胸に灯し 
瞳をうるませ唄う 
Ave Maria 

一足ずつを 
ゆっくり踏みしめ 
人々の間の道を 
彼は

いつまでも 
見送る人々から 
遠く離れた草原の 
風に開いたドアがあり 

光に包まれた人影は 
こちらを振り返り 
手を上げた後 
新たな日々へ 
歩いていった 








自由詩 Ave Maria  Copyright 服部 剛 2007-09-30 21:04:39
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