濡れた布団 
服部 剛

信号が赤になり 
車を停めると 
予報外れの雨粒を拭う 
ワイパーの向こうに 
頭を霧に覆われた
高層マンション 

霧のちぎれる間に覗いた 
バルコニー 
干されたままの布団がひとり  
小さい姿で雨に濡れ 
出かけた住人の帰りを 
じっと待つ 

信号が青になり 
ハンドルを握るぼくは 
自らの道を前に見据え 
心にまとわりつく無数のちりを 
振り払うように 
ふたたび アクセルを踏んだ 





自由詩 濡れた布団  Copyright 服部 剛 2007-09-30 20:38:53
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