月夜ノ呼声 
服部 剛

見上げた秋の夜空に昇る 
丸い月の下を 
千切れ雲はかすめゆく 

光に浸した綿の身を 
何処かへ届けるように 

月明かりに照らされた 
十字路に立ち止まり 
マンホールの蓋がはまる 
地面の底に響く 
激しい水の流れ 

( 飛び散る飛沫しぶきの間から 
( 助けを求める誰かの手が 
( わたしの名前を呼んでいる 

今迄 
幾人の叫びに耳をふさぎ 
日々の路上を通り過ぎただろう 

月明かりに照らされた路面に 
うつむくわたしの影 

見上げた道路標識に 
手を繋いで道を渡る 
少年と妹の青い影 

道の両側にともる 
いくつもの街灯と
無数の鈴を奏でる虫の音の
向こう側に待つ 
誰も知らない明日へ 
再びわたしは歩き出す 

遠い暗闇に開いた 
たった一人の小さいてのひらが 
わたしの名前を呼んでいる 





自由詩 月夜ノ呼声  Copyright 服部 剛 2007-09-27 22:04:19
notebook Home