地下鉄
ブライアン

蛍光灯で白く照らされた車内。対峙して座る女性は、淡いベージュのパンツを履いていた。
手には黒いハンドバックを握り締める。

彼女の裡には激しい恋慕があった。
その激しさを恐れる彼女は、淡いベージュのパンツを履いた。
彼女の裡の、激しさを追い払ってしまうために。

孤独であることは、愛することを唯一可能にする手段だ、と
疑わなかった男は、
煌びやかな街で、おどけた表情を見せる。

夜を消し去った光は、人々の孤独を余計照らすことしかできなかった。

鄙びた集落に置きっ放しにされた週刊誌のように、
衰退させるためだけの理屈で、彼は光を見つめる。

地下鉄のベンチに置かれた週刊誌を
汚れた服を着た中年の男が集めている。
彼にもまた、激しい恋慕があった。


自由詩 地下鉄 Copyright ブライアン 2007-09-26 12:13:42
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