かぜになる
アオゾラ誤爆


ゆるされない原色のスニーカーをはいて/きみは逃げる。
閉ざされた校門をぎい、と引いて赤錆にふれる。
チャイムを背中に叩きつけられながらそうっとすきまを抜けていく。
クラスメイトの顔はもう忘れることにして、小走りで空気をさいていく。爽快。
ほんのすこしの罪悪感をまじえながらいきをはく。
決してふりかえらない。
きみは逃げる/月曜日の午前11時。

道端に伸びているよく知った、青々とした草/名前はしらない/をちぎっては放り投げる、
どこにも届かない気がしている。すべてを追い抜く速度で飛んでけ

うしろへ、うしろへ

ながれていく景色の完成を待たずに次の景色をみる。
こまやかに髪が洗われていく。シャボンの香りを連れてくるのは、風。
錯覚の教師の声にびくついて、耳をすませ/安堵したわらいを漏らす。
すり切れた鞄からトイカメラを取り出してさんさんと落ちてくる太陽を閉じ込める。
あらわれた映画色の世界のなかに、たったひとつの居場所を見つけて/浸る。


まえへ、まえへ

散歩中の犬の唾液が/しみたアスファルトを踏みつけ行く、
きみはとおざかるきせつのうたを聞こうとしてる。/聞いている
走れるっていうことは、とべるってことだったよ、きみは彼の嘘をみずからに溶け込ませながら
途切れない構造のフィルムを網膜にうかべている/空。
束ねられた収穫の象徴からめをそらしてコントラストの低い路地へ、迷い込む
きみは/逃げる。
坂道をかけのぼったさきの、子供たちがいる公園で、あらゆるものを切った/シャッター
それでも絶えない花の色に、身を寄せている。



どこかへ、どこかへ

こういうとき口笛ができればと、いつもおもっている。/眩しくて潔く目をとじる
陽はもう当分さめない。
すべてを追い抜く覚悟でもって、きみは逃げる
新聞紙がさすらえてゆくように、空き缶がころがるように
きみは/逃げる
ほどけたままの靴紐を無視して/きみは逃げる
球体をたしかに感じている。今日の空に、適当に名前をあげた。/きみは逃げる
かぜに/なる。




自由詩 かぜになる Copyright アオゾラ誤爆 2007-09-22 19:38:37
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