海を見ている十七歳
水町綜助

 排気音が高く
 高く空へ昇って
 陸橋を走るぼくは
 町並みに連なり
 息づかいみたいに
 浮かされて
 白くあからさまな
 積乱雲を
 水平して
 開けていくにつれ
 早く
 流れ
 飛んで
 千切れていくように
 千切れて
 空の端をつかんで
 破り捨てていけば
 面影を思い出す

 ぼくは

 何だったかな
 速度が増していくうちに
 なんでもなかった
 水滴が浮かんでいくなら
 ごめん
 流れていくだろうし
 きっとそんなもんだ
 こぼれた後にどうなるかなんていうのは
 たいして変わる訳じゃない
 
 ひとつ
 言ってみたくもなるだろう

 問題じゃないよ」

   *
   *
   *

 すりぬける
 プラントの
 焼け付いたにおい
 港のゲートが口を開けていて
 コンクリートに平行する
 砕けない海からの
 反射
 ひろがるのは
 水をぶちまけた
 パレットの光
 ここからだよ
 ここから見ていた
 十七歳で
 空気を
 ふたつ
 眩しくて
 細めてしまったら
 このコンテナと
 鉄の港さえも
 映りきらない
 そんな瞳で
 背中と
 逆光の影と
 まだかがやきにうつむく
 ぼく自身を








自由詩 海を見ている十七歳 Copyright 水町綜助 2007-09-19 15:55:53
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