「 踏絵 」 
服部 剛

早朝の人気無ひとけない聖堂で 
十字架にかかった人の下にひざまずき 
両手を合わせる
マザーテレサのように 
つらぬかれたこころがほしい 

修道院から 
何も持たずに飛び出して 
遠く離れたインドの村の 
路上に死にゆく痩せた老婆に歩みより 
身を屈め手をさしのべる
マザーテレサのように 
あふれるこころがほしい 

わたしは時に 
放蕩ほうとうの夜に溺れ 
悪気もなく誰かを傷つけ 
暗闇に微笑む何者かが 
試すように目の前に置いた 
踏み絵の顔を幾度も踏んだ 

あの日から
汚れた足に踏まれた 
哀しい顔の面影が 
こころに消えず
今も囁く 

( そんなお前だからこそ・・・ ) 

群を逸れた羊のようにうつむいて 
ひとり夜道を歩く背後から 
月の光はふりそそぎ 
誰かがわたしを待っている
明日へつかわす 





自由詩 「 踏絵 」  Copyright 服部 剛 2007-09-19 01:18:49
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